ガレリア・プロバ

ガレリア・プロバ1989年7月発行「La Gazzetta 創刊号」
ストックブリッジ
ロックウェルが生前暮らしていた家。

ノーマン・ロックウェル・ミュージアム訪問記
ノーマン・ロックウェルミュージアム
ロックウェルが亡くなるまで使っていたアトリエ。
最近、この眺めのよい丘に移されて来た。


しかし、これまたロックウェルの“メインストリート”に出てくる、絵の画面でいうと一番右側にある建物の中で食事をすることになり、再び気持ちはウキウキ。
まるで自分が絵の中に入り込んでしまったような気分でした。
ノーマン・ロックウェル「ストックブリッジ メインストリート」
ノーマン・ロックウェル「ストックブリッジ メインストリート」

レストランではいろいろなエピソードやモデルの話などたくさん聞く事ができました。
中でも一番印象に残ったのは、私の大好きな作品の中のひとつ“サプライズ”に関する話でした。

教室になんともいえない顔をした女の先生が立っていて、彼女の後ろの黒板には、Happy Birthday Miss Jonesと書かれています。
教卓の上にはプレゼントと思われるリンゴやバラの花が置いてあり、子供たちがそれを見つめているという絵なのですが、その先生のモデルをやっている女性がなんと私たちが食事をしたレストランの各テーブルの上に飾ってある小さなかわいいお花を毎朝活けているというのです。

残念ながらその方にお会いすることはできなかったのでものの、私の目の前にあるこのお花を私の大好きな作品の中の人物が活けているなんて!!
信じられない、と大感激という感じでした。

ノーマン・ロックウェル「サプライズ」
ノーマン・ロックウェル「サプライズ」

だんだん気持ちも落ち着き改めてまわりに目をやると、ウェイターも他のお客様もそのままロックウェルの絵の中に出て来そうな人達ばかりです。
蝶ネクタイをしめ帽子を持ったおじいさんがおばあさんをエスコートして入ってきたりもします。
ストックブリッジの町はすべてが絵のようなのです。

ノーマン・ロックウェル「フットボールヒーロー」
ノーマン・ロックウェル「フットボールヒーロー」

ひとしきり楽しい話又真剣な仕事の話が終わり、いよいよロックウェルの原画を見せて頂けることになりました。
とうとう中に入れる時が来たのです。
ロックウェルのポスター、ポストカード、小物、画集などなどが所狭しと並べられているおみやげコーナーをぬけて奥の部屋へ入っていくと四方の壁に原画がかけられていました。

今まで画集でしか見たことのない絵が私の目の前に、触れる事が出来る程近くにあるのです。
その原画の迫力、息を飲む、言葉を失う、涙が出る、全てがひと時におきる感じでした。

思っていたよりもずっと大きなキャンバスに描かれているそれらの絵は、さすが超写実主義といわれているロックウェルの作品だけあって人間が今にも動き出しそうで、たんすの引き出しなど本当に開けられそうな感じでした。
「この絵の具の一色一色をロックウェルが塗っていたのか・・・」と思うとロックウェルが隣にいる様な気さえしてきました。

ノーマン・ロックウェル「チャーウーマン」
ノーマン・ロックウェル「チャーウーマン」

この建物は2階建ての一軒屋で各部屋の壁に絵が掛けられています。
最初に通された部屋には人種差別を題材にした作品が集められていました。
ほとんどがユーモラスでほのぼのしたテーマばかり手がけた彼の作品の中では珍しいものなのですが、しかし彼はこういう問題に対してもとても人間的な気持ちで素直に描き出していました。

彼は又戦争中にもたくさんの作品を手がけ、絵を通して人々に平和を訴えました。
彼の代表作である“4つの自由”という作品もこの時描かれたものですが、これらの絵によってアメリカ中の人々が勇気づけられたそうです。
彼のこんな一面もロックウェルというアーティストの存在を大きくしていった大切な理由の一つと言えるでしょう。

たった1枚の絵で考えさせられ、本当に大切なものが何かを教えられたような一瞬でした。
そうかと思うと他の部屋にはロックウェルの息子をモデルとして描いた“アフター・ザ・プロム”や幸福そうなカップルが婚姻届を描いている“マリッジ・ライセンス”など見ただけで自分まで幸せになってしまうような絵もありました。

又別の部屋にはまるで完成品のような習作、下描きの数々、鉛筆やチャコールで熱心に描き込んであるそれらの作品は信じられないほど細かく描かれており、これをスケッチだとは想像を絶するものばかりでした。
ほんの数十分の間にこんなに色々な気持ちにさせれてしまう、彼の偉大さを身をもって知らされました。

ノーマン・ロックウェル「アフター・ザ・プロム」
ノーマン・ロックウェル「アフター・ザ・プロム」




ウィリアム氏は親切に絵の説明をして下さるのですが、次の約束の時間が迫っているとかで次から次へと進んでいきます。
もっとゆっくり絵を見たいのに・・・
でも入館料も払ってないし・・・
なんてことを考えながらも必死で見て回りました。

1階2階の各部屋にはすごい数の原画が掛かっていましたが、実は倉庫にこの何倍もの絵がしまってあると聞いて又ビックリ。
と同時にもったいない、見たい絶対に見たいという気持ちを抑えることができませんでした。

ウィリアム氏のお話によると、この現在ミュージアムがあるところから少し離れたところにあるLINWOOD(リンウッド)に、新しいロックウェル・ミュージアムを建てる計画が進んでいるそうです。
すでに土地も購入してあり、ロックウェルのアトリエも実家の庭からこの予定地に移されていました。
私たちもその予定地に連れて行って頂いたのですが、40エーカーあるというその土地の広いこと美しいこと。
一面を緑の草でおおわれたなだらかな丘からはヒューサトニック河が見おろせました。

新しいノーマン・ロックウェル・ミュージアム
新しいロックウェル・ミュージアムが建てられる敷地にあるミュージアムのオフィス。

今はまだその中にポツンと真っ赤なアトリエがあるだけ。
土地はあるものの資金不足でなかなか計画通り進まないようでした。
彼の作品はこの新しい美術館を創ってもまだ掛けきれないほど数があるというのに・・・
関係者の方々はみんな何とか早くこの夢を実現させたいと口を揃えておっしゃっていました。

又この夢はプロバの夢でもあります。
すでにロックウェル・ミュージアム出版のオフセット印刷のポスターを取り扱わさせていただいておりますが、こういったミュージアムの売上は新しい美術館建設の資金に使われているのです。
今後もできる限りの協力をもって、一刻も早く(彼らの予定では1990年だそうですが)新しい美術館が完成することを心より願ってやみません。

というわけで、“かけ足ロックウェル・ミュージアム訪問”の1日はあっという間に終わってしまいました。
ストックブリッジの夕陽は、あたり一面をオレンジ色に染めています。
その夕陽に向かい、将来は絶対ロックウェル・ミュージアムの案内のおばあさんになるぞ!!と心に誓い帰途に着く私でした。
I.M

ノーマン・ロックウェル・ミュージアムにて
ロックウェル・ミュージアムの案内を長年務め、5月24日に引退した、80歳を過ぎてもまだ素敵なおばあさんとロックウェル大ファンのプロバI.M




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このページは1989年7月14日にガレリア・プロバから発行された「La Gazzetta 創刊号」の内容を掲載したものです。


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