ガレリア・プロバ

ガレリア・プロバ1990年1月発行「La Gazzetta vol.3」

J.トレンツ・リャド「ヴィラヴェルディ」   J.トレンツ・リャド「ヴィラヴェルディ、サンタアガタ」

J.トレンツ・リャド「ジヴェルニーの花」 ここで、特筆すべきは「水」です。
かつての印象派の巨匠達にも、水を描いた名作は沢山ありました。
マネやモネの「舟遊び」、カサットの「水浴び」、あるいはアメリカ人画家ホイッスラーの「バターシーの古橋」。
しかし、水という透明な物質をリャドほど深化させて描いた画家はいないでしょう。
光を受け、かすかに揺らぎ、見る人をして静かの水底に引き込むのです。

私達がリャドを「光と影の奇跡」と考えるのも、この水あってこそだと思います。
水辺には名もない草があり、花が咲き、樹々の緑が影を落としています。
それはなんとも不思議な静かさです。
J.トレンツ・リャド「ベルヴェデーレの睡蓮」
そしてリャドの風景画には人物は見当たりません。
印象派の巨匠たちが婦人や幼い子供の日常を優しいタッチで描いたことを考える時、リャドの風景画はどうしてもモネの睡蓮の池を連想してしまうのです。
しかし、リャドの画面からは、水辺にすむ生命の喜びが微かに伝わってきます。

リャドはまた、この作品で画面中央に大胆な枠さえ描きました。
見ようによっては、これも浮世絵の構図法に影響された印象派の巨匠たちを超えんとする彼の試みかもしれません。

北斎や広重の版画では、モティーフを強める為、一部分を前面に大きく描いたり、あるいは他の部分を切ってしまったりしています。
J.トレンツ・リャド「ジヴェルニーのばら」
春信の浮世絵などは、人物が画面半分切って描かれていますが、マネもモネもこの大胆な手法を前述の「舟遊び」などに取り入れました。
リャドもまた、大胆な色彩と筆致で、枠という手法で切り取ったのでしょう。
そのうえ、リャドの世界はこの枠さえも超え、点々と広がるのです。

ルネッサンス以来の西欧絵画の伝統、印象派の技法・・・
あらゆる技法に支えられたリャドは、こうして乾いた現代人の心にやすらぎと潤いをあたえる風景画に到達しました。

J.トレンツ・リャド「ジヴェルニーの湖」
この号では、到着したらリャドの作品から11点をセレクトしました。
ご覧のように、この絵は中世風のサロンから、モダンなオフィスにも、純和風の邸宅にも不思議なくつろぎをもたらします。
私達は作家に対する礼儀からも、彼の絵をフラットな蛍光灯の光にだけはさらすまいと考えています。

上右から、ヴィラヴェルディ サンタアガタII<油彩>1989年、ヴィラヴェルディ<油彩>1989年、ジヴェルニーの花<油彩>1989年、ベルヴェデーレの睡蓮<油彩>1989年、ジヴェルニーのばら<油彩>1989年、ジヴェルニーの湖<油彩>1989年

J.トレンツ・リャド

個展の開催に、建物を創造したリャド。

1989年にバルセロナ最大の百貨店エル・コルテ・イングレスで開いた個展ではリャド自ら設計図を引き、会場の中にもう一つ、建物をつくりました。
ご覧のように外交を採り入れたトラス構造。
木の材質を生かした堂々たる柱が並ぶコリント様式。
そこに彼は、自分の手で作品をレイアウトしました。
例えば風景画は、画壇の常識を破り、上下左右に4点まとめて展示し、見る人をアッと言わせました。
これも完全芸術家リャドの一面です。

J.トレンツ・リャド
マジョルカ島パルマのアトリエへJ.トレンツ・リャドを訪ねたガレリア・プロバの鈴木。
J.トレンツ・リャド
J.リャドの作品を正面入り口に飾ったスペイン最大の百貨店エル・コルテ・イングレス。
J.トレンツ・リャド
堂々たるコリント様式の柱が印象的な会場内。リャドの「完全芸術家」ぶりがうかがえます。
J.トレンツ・リャド
外交を巧みに採り入れたトラス式の天井。彼は1点1点の作品に、光の工夫をしています。


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このページは1990年1月26日にガレリア・プロバから発行された「La Gazzetta vol.3」の内容を掲載したものです。


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