ガレリア・プロバ

ガレリア・プロバ1990年4月発行「La Gazzetta vol.4」

1時間後、「マリア・ホセとプロバのために――」というサインが入れられ、彼は筆をおいた。

正味3時間にわたる一大パフォーマンスは終わった。(終わったと云ってもこれはまだ第一幕に過ぎない。本当の完成にはもちろんさらに数日から数週間を要する。)

初対面の人の方がそっくりに描けるのだと彼は云う。
少しでも知っている人物だといろいろな感情が入ってしまうかららしい。
しかしそうしたものが微妙に入ることによって、キャンバスの中の人物が単なる描き写しでないリアリティを持つのも確かだ。



現代アートが抽象化の流れにある中で、肖像画を描き続ける彼の存在は、その正統な技術とは逆に非常に特異である。
彼も昔は抽象画家であった。
だがそれだけでは何かが足りなかった。
知らない人が見れば今彼の描く肖像画と風景画を同一作家の作品と思う人はほとんどいないであろう。

それくらい違う要素で成り立っている。
彼はこうした全くタイプの異なる絵を描くことでバランスをとっている。
つまり高い技術を持った“仕事人”としての自分と、革新的なものを求める“表現者”としての自分との。
この、どちらか一つではない、両方持っているというバランスが彼最大の魅力であるのだ。

私たちは彼と彼の家族に別れを告げ、15世紀の屋敷をあとにした。
版画化にも非常な興味を示してくれた。
(1990年)9月には日本を訪れてくれるという。
彼の持つ言葉にできないエネルギーの感触を、多くの人にきっと感じてもらえることだろう。

S.Y.

1.パレットの上に並んだ12色の絵具。
2.モデルにポーズを指示するリャド。
3.キャンバスをセットする。
4.ハケで地となる色をキャンバス全体に塗る。
5.1分ほどで塗り終わる。
6.中央を布でふきとる。これが顔部分となる。
7.髪部分を茶色で形取り、顔部分に肌色をのせる。
8.目、鼻部分の影をつけていく。
9.細かく色を置いていく。
10.かなりモデルに近づいてくる。
11.瞳に白を入れ、唇に色を入れる。人物の表情が明るくなる。
12.扇形の筆で掃くように色の境目をならし、肌の質感を出す。サインを入れ完成。。


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このページは1990年4月8日にガレリア・プロバから発行された「La Gazzetta vol.4」の内容を掲載したものです。


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